【ロードレース】レース解説クライマー、逃げ
自転車レースは全員が「1位でゴール」を目指しているわけではありません。
それぞれの選手に異なるゴールがあります。
今日は「山岳クライマー」と「逃げ専門」の選手がレース中にどのような動きをするかをご説明します。
ブエルタ ア エスパーニャ 第4ステージを例にして解説します。
1、まずはコースの確認から
全長161,4KM
途中に1級山岳が1つ、ゴールも山頂です。
これは山岳コースと呼ばれます。
今日は山岳クライマーが活躍するコースです。
「山岳クライマー」と、「逃げ職人」に注目してレースを見て行きます。
山岳クライマー
山岳クライマーの目標は、山岳ポイントを取りまくり、最終ステージで最も多くポイントをとっている状態でいることです。
今日は2つ、ポイントの場所があります。1級山岳と、ゴール地点です。
どちらも
1位通過 10p
2位通過 6p
3位通過 4p
4位通過 2p
がもらえます。
山岳の級によってもらえるポイントも変わってきますので、自分の体調と相談しながら、どのステージで頑張ってポイントを稼ごうかな。というのをクライマーさんたちは考えています。
ちなみに、選手の着ているジャージを見たら、今時点での山岳ポイント1位がわかるようになっています。
そのレースの時点で一番ポイントを持っている人は水玉のジャージを着ています。
ステージ4始まる日は、こんな状態で始まりました。
昨日(1~3ステージまで)の山岳賞順位
1、マテ・マルドネス(コフィデス) 24p 水玉ジャージ着用
2、ローランド(AG2R ) 12p
ここで、昨日まで(1~3ステージ)の総合順位はこうなっています。
1位 クワトコフスキー(スカイ) 9時間10分52秒
109,ローランド(AG2R ) +11分34秒
158、マテ・マルドネス(コフィデス) 20分27秒
総合順位というのは、全レースの個人タイムの合計が早い順番です。
例えばステージ1 3時間、 ステージ2、3時間 ステージ3 3時間だったら、今の合計タイムは9時間。この合計タイムが一番早い人が、総合リーダージャージを着ます。
この順位だけ見ると、クライマーめっちゃ弱いやん。となりますが、実はクライマーにとってこの数字は全く関係ありません。
なぜなら彼らの目標は、山岳ポイントを取ることだから!
究極をいえば、山岳ポイントがない平坦ステージの日は、後ろの方で休憩しながら走ってもいいのです。
あと、逃げ職人もご紹介します。
ベンジャミン・キング(ディメンション・データ)
逃げというのは何かというと、スプリントも山岳もまぁまぁできる。
でも、どちらかに秀でているわけではない。
という人がステージ優勝を狙って行います。
これはレースに沿ってご説明するのがわかりやすいので、ちょっと我慢して最後まで読んで見てください。一発で理解できると思います。
今日のレースはクライマーと逃げ職人が最初協力して走り、レース終盤でバチバチの争いをしていたため逃げ職人の説明もちょくちょく挟みますね。
それではレースを見て行きます。
序盤 逃げ集団形成
レース序盤、集団が2つに分かれます。
・先頭の9人先頭集団(逃げ集団ともいう)
・後ろの大勢いるメイン集団(パトロンともいう)
1級山岳ポイント
メイン集団と先頭集団のタイム差が6分に開き、先頭集団が1級山岳に突入
山岳通過結果
1位通過 マテ・マルドネス(コフィデス)+10p 総ポイント数34p
3位通過 ローランド(キャノンデール) +4p 総ポイント数16p
心理
山岳1位マテ・マルドネス
(とにかくローランドをマークしたい。ローランドがステージ1位でゴールするなら自分は2、3位くらいでゴールし、ローランドが山岳ポイントを大量にgetするのを防ぎたい)
山岳2位ローランド
(山岳ポイントをgetしたい。このステージを1位で終えたら、山岳ポイント10点getできる。 ただ、先頭集団にいる9名の中でステージ優勝を狙っている選手は他にもたくさんいる。例えば逃げ専門と言われているベンジャミン・キングは、確実にステージ優勝を狙っているだろうな。)
ベンジャミン・キング
(山岳賞を狙っている訳ではないので、この1級山岳は山岳狙いの人にポイント譲ろう。ただ、ステージ優勝はいただきたい。今日はステージ優勝者が山岳ポイントももらえるわけだから、敵は山岳ポイント狙いの選手と逃げ選手だな。)
クワトコフスキー(スカイ)
(今は、バーチャル総合1位がベンジャミン・キングなんだ。このままのタイム差でレースを終えたらまずいけど、普通レース終盤でメイン集団が加速するから、大丈夫。
あと、今日は逃げを容認してもいいかな。先頭集団には、総合ジャージを脅かす人がいないから。)
バーチャル総合1位とは。。
仮に今のタイム差でゴールした場合の総合順位のこと。
今日のレースは
1位 クワトコフスキー(スカイ) 9時間10分52秒
7位ベンジャミン・キング (ディメンション・データ)+4分33秒
+4分33秒 で開始した。今はクワトコフスキーとベンジャミン・キングの距離がだいぶ開いているので、このままゴールをしたらクワトコフスキーは4分33秒以上キングに遅れてゴールすることになります。
しかし、それを防ぐため通常レース終盤でメイン集団は加速します。少数で走っている先頭集団に比べ、大勢で走るメイン集団は体力を温存しているため終盤にペースをあげることができるのです。
逃げを容認とは。。
レース終盤でメイン集団がどれだけ加速するかの話です。メイン集団が先頭集団に追いつくまで加速すれば、それは逃げを容認していません。 先頭集団のメンバーに、総合順位を脅かす恐れの選手がいないと判断した場合、メイン集団は逃げを容認して、追いつくまで加速しません。
平坦なとこだったら10キロの距離差を1分で追いつけるというのが目安です。
・14km スプリントポイント直後
ベンジャミン・キング(ディメンション・データ)がスプリントポイントを1位通過。
スプリントで加速したため、先頭集団が2つに分裂。山岳ポイント狙いのマテ・マルドネスとローランド がいる後ろと、ベンジャミン・キング率いる先頭集団に別れる。
筆者は「ローランドは、キングの逃げを容認していいのか!?」と思いながらレースを見ていました。
・残り9,5KM
ローランドが先頭と45秒差になって、ようやく(?)飛び出しました!!
もしローランドが先頭集団に追い付いて1位ゴールすれば、ローランドに10ポイントが追加されます。山道なので風の抵抗はあまり関係ないのですが、今から1人で45秒差を詰めるというのは結構キツイ。。ローランドいけるのでしょうか。
そしてマテ・マルドネスはローランドを逃しました。これは、単に疲れているのか。それともローランドが先頭集団に追いつくことは不可能だと思っているのでしょうか。
・フィニッシュ
ローランドは結局、メイン集団のお尻が見えるほど僅差まで 距離を縮めました。
しかし、1人でここまで登ってきたローランドにはフィニッシュに向けて最後闘う力は残っておらず。。
キングキングが最後のスプリントを制して1位ゴール。ステージ優勝と山岳ポイント10pゲットしました。(キングにとって山岳10pはおまけかもしれませんが。)
ローランドは惜しくも3位ゴール、山岳ポイント4pをゲットしています。山岳ポイント稼げず、足を使ってしまう結果に。しかしローランドカッコ良かったです。
クワトコフスキーは最後、メイン集団の加速とともにタイム差を縮めていきました。キングに+3分15秒でフィニッシュし、総合リーダージャージを守っています。
・このステージの結果
ステージ順位(4stageのタイム早い順)
1位 ベンジャミン・キング (ディメンション・データ)4時間33分12秒
3位 ローランド(AG2R ) +13秒
4位 マテ・マルドネス(コフィデス) +1分08秒
13位 クワトコフスキー(スカイ) +3分15秒
ステージ4終了時山岳ポイント
1、マテ・マルドネス(コフィデス) 36
2、ローランド(キャノンデール)20
総合順位(1~4stageのタイム合計早い順)
1位 クワトコフスキー(スカイ) 13時間47分19秒
18位 ベンジャミン・キング (ディメンション・データ)+ 1分05秒
47位ローランド(キャノンデール) +8分27秒
84位マテ・マルドネス(コフィデス) 18分20秒
まとめ
今回、キングとローランドは最後のゴールを1位でフィニッシュしたい敵同士でした。キングの目的はステージ優勝、ローランドの目的は山岳ポイントです。彼らは敵同士ですが、レース終盤までは同じ先頭集団として風除けを交互にしながら協力し合って走っています。敵同士が協力しあうのは不思議ですが、161KMを9人で走ろうとすれば、協力しないと走りきれないからです。そして最後に、敵同士の力の残り具合を見てアタックを仕掛け、勝負をするのです。
以上山岳クライマーと逃げのレースでの動きでした。